
夜が開けるまで
第5章 誤算
由紀は他の外交員とは別格のオーラを漂わせていた。
グレーの色無地の着物
金刺繍が全体的に施された豪華な袋帯、ピンク色の帯あげ。
着物を着慣れた女性ならではの、玄人的な着物遊びだ。
落ち着きの中に品格と華やかさを兼ね備えた雰囲気に、招待客は口々に言葉をかけた。
「ここの若女将かと思ったよ」
由紀は丁寧にお辞儀をしながら、
「お待ちしておりました。今日は楽しんでいって下さいね」
会場に次々と招待客が到着する中、由紀は一人一人に笑顔で挨拶を交わす。
その中に、拓馬の母親もいた。
