
夜が開けるまで
第5章 誤算
目が覚めても、疲労感は消えなかった。
うっかり寝過ごしたことに由紀は困惑しながら、車を降り拓馬のいるところまで歩きだした。
夜の闇の中に、すーっと現れた由紀を見た拓馬。
彼は運転席に腰掛けたまま、呆然とした表情だ。
由紀はいつも通りに、後部座席のスライドドアを自分で開けて乗り込んだ。
「すみません、一瞬誰だかわからなくて…」
拓馬は体をかがめながら、後部座席へと移動してきた。
「イヤね。まるで幽霊を見たような顔して」
由紀は無理な笑いを浮かべた。
「ずっと待っていても来ないから心配したよ。
由紀さん…会いたかった。」
拓馬は由紀の身体をきつく抱きしめた。
