
夜が開けるまで
第6章 一人息子の告白
拓馬もまた、向井家の一人息子だ。
父、向井武志はレジャー開発の不動産会社を経営している。
仕事人間の父は家庭を顧みず、経済的に困ることはなかったが家族の思い出はなかった。
両親は円満とは言えず、
拓馬は殺伐とした家族関係から逃れるように、中学生の頃からバンド活動に夢中になった。
母親は有名大学出の才媛で、ミスキャンパスにも選ばれた事のある才色兼備の持ち主だった。
ミスに選ばれたことが縁で雑誌のキャンパスモデルや、政治家の選挙活動にも参加していた。
結婚後は一人息子に英才教育を受けさせ、ピアノ、スイミング、英会話などを早くから習わせた
拓馬は母との関係は良好だったが、父親とは衝突を繰り返した。
