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夜が開けるまで

第1章 仮面夫婦

誰もいない霊園内に佇む、一人の礼服の女。


飾り気のない礼服姿でありながらアップされた髪のうなじの美しさとスッと伸びた背筋が気品を漂わせている。



女の目の前にどこからか、桜の花びらがヒラヒラと舞い落ちた。




静かに顔をあげ、立ち上がると広々とした霊園内を見渡してみる。





佇む場所から離れた管理棟のそばに満開の桜が一本、青空に映えてその存在感を際立たせていた。




「桜は散り際が一番美しい。

私も桜のように人生を咲かせて、やがて散っていけたらそれでいいの」




四季が移ろいゆくように、彼女は幾人もの男達の人生を通り過ぎてきた。


翻弄されても、そのために傷ついても


再び立ち上がり

強くしたたかに、生き抜いていく。


今までも

そして、これからも




女の真価は、波乱の波にのまれて、はじめて問われるのかもしれない





エピローグ 終


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