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小春食堂【ARS】

第37章 美術館【小春】

卒業制作展のあたりは、うちも忙しくて。

会期のうち、時間が取れるのは一日だけしかなかった。

タクシーで市立美術館に乗りつけると、正面玄関の大理石の階段を上った。

半年ぶりに大野さんに会える。

階段を一段上がるごとにドキドキした。

まるでシンデレラみたいやな。
そんな自分がおかしかった。

美大の卒業制作展は盛大なものやった。

油絵、デザイン、漆芸、ファッション…

染織の展示では仕立てた着物もあった。
お座敷では無理やけど、普段着に着たい斬新な柄行きで興味をひいた。

タケシさんの作品もあった。
大きな大きな花器で、現代風でモダンな作品やった。

何かようわからん鉄の作品もあった。
大野さんのお友達の女の子の作品やろか。
うちには、ちょっと理解はできひんかったけどすごい前衛的やった。

あの5日間に会ったみんなの顔が浮かぶ。

気安く話しかけてくれてたあの子たちは、実はこんなに素晴らしい芸術家やったんや。

うちは心踊る気持ちで次の展示室に進んだ。

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