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小春食堂【ARS】

第40章 再会【小春】

もう涙をこらえるのに必死だった。

カウンターの向こうの厨房に逃げ込んだ。

やっぱり大野さんは私のこと覚えてない。

「あの時はありがとう。」

その言葉を胸に封印した。

「小春ちゃん、ごちそうさま!」

もうひとりのお客さんから声がかかった。

にじむ涙を拭いてホールに戻りお勘定をしてお客さんを見送る。

逃げるように大野さんの横を通りすぎようとした時、腕をつかまれた。

「あの時は、あんがと…。」

私の胸に封印した言葉は、大野さんの口から語られた。

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