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小春食堂【ARS】

第22章 何も知らない【潤】

俺は、小春ちゃんのことを何も知らない。

フルネームは?

住所は?

電話番号は?

彼氏はいるの?



小春ちゃんは、独身なのは間違いない。
もう何年も食堂に通ってるけど、結婚してるならさすがにわかる。

じゃあ、過去は?

過去に、結婚してたことは?

京都出身なのに、今何で東京に住んでんだ?
京都で何かあったのか?


「潤。」

考え込んでいた俺に声をかけたのは、役者仲間の女の子。

「どうしたの?元気ないじゃん。」

彼女は、いつも明るくて、皆に気を配ってくれる。

「いや、何でもないよ。」

彼女は、俺のグラスにビールを注いでくれた。

「サンキュ。」

俺は、彼女のグラスにもビールを注いで、あらためて乾杯した。


「今日の潤の芝居、よかったよ。」

「お前もかなり弾けてて、いい感じだったよ。」


まわりの皆は、酔っぱらって叫んでる奴、寝てしまってる奴…。

まともに意識のある奴はほとんどいない。


「今日の潤、たまんなくイケてたよ。」

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