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【S】―エス―01

第7章 再会の旋律

 それは以前、意味不明な言葉と共に、瞬矢の腕に水色の薬品を注射した男と酷似していた。


(なぜ……なぜだ!?)


 全身から厭(いや)な汗が一気に吹き出る。蝉の声が耳につく。


 瞬矢は目の前に広がる光景から視線を逸らすことができず、手探りで後ずさろうとした。


 手探りの指先がデッキのボタンに触れ、機械的な音が鳴る。それと同時に、オーディオから流れてきた音楽。


 アントニン・ドヴォルザーク交響曲第9番、第2楽章『新世界より』。


 あの櫻井という男が口ずさんでいた曲だ。


 この一致は何か関係があるのか、それともただの偶然なのか。瞬矢の思考は、ますます混乱を極めた。


「瞬矢、どうかした? それにこの曲――」


(茜……!?)


 まるで、中の様子を窺うような茜の声ではたと我に返った瞬矢は振り返る。


 視線の先には、玄関先からひょいと顔を出しこちらを覗き込む彼女の姿があった。


 やはり茜も異変に気づいたのだろう。小首を傾げ、訝りながらも玄関からコテージ内へと足を踏み入れていた。


 この光景を見せてはいけない。そう思い、咄嗟に声を荒らげる。


「――っ、来るな!」
 

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