【S】―エス―01
第7章 再会の旋律
駆け寄ったが時すでに遅く、茜は視線の先に【それ】を捉えていた。
「……!」
あんぐりと開かれた口は言葉を失う。
「い……いやぁ……っ!」
響いたのは、叫喚。
両手で頭を抱え茜は膝から崩れ落ちた。瞬矢は視界を遮るように割って入り、支軸を失った茜の体を両手で支える。
その場の雰囲気とは到底不釣り合いと思われる雄大な旋律が、蝉の声に混じり悲しく響く。
**
警察の到着後も茜はずっと俯き、その間一言も発しなかった。
死後しばらく経っていた為に身元の判別は難しく、後に歯形などから10年前に失踪した茜の父親、東雲 暁(しののめ あきら)であることが判明する。
現場に遺書らしきものは見当たらなかったが、状況から自殺と断定された。
同日、午後3時40分のこと。
警察署内の廊下の椅子に座り、瞬矢の隣ずっとふさいだままでいた茜。
不意に、口元に感情とは裏腹な笑みを見せ震える声で言う。
「覚悟なら、とっくにできてたはずなのに……なんでかな?」
覗かせた笑顔とは相反し、膝の上で両手を握り締めた。小刻みに震える手の甲に、涙がぽたり伝い落ちる。
「……!」
あんぐりと開かれた口は言葉を失う。
「い……いやぁ……っ!」
響いたのは、叫喚。
両手で頭を抱え茜は膝から崩れ落ちた。瞬矢は視界を遮るように割って入り、支軸を失った茜の体を両手で支える。
その場の雰囲気とは到底不釣り合いと思われる雄大な旋律が、蝉の声に混じり悲しく響く。
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警察の到着後も茜はずっと俯き、その間一言も発しなかった。
死後しばらく経っていた為に身元の判別は難しく、後に歯形などから10年前に失踪した茜の父親、東雲 暁(しののめ あきら)であることが判明する。
現場に遺書らしきものは見当たらなかったが、状況から自殺と断定された。
同日、午後3時40分のこと。
警察署内の廊下の椅子に座り、瞬矢の隣ずっとふさいだままでいた茜。
不意に、口元に感情とは裏腹な笑みを見せ震える声で言う。
「覚悟なら、とっくにできてたはずなのに……なんでかな?」
覗かせた笑顔とは相反し、膝の上で両手を握り締めた。小刻みに震える手の甲に、涙がぽたり伝い落ちる。