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【S】―エス―01

第7章 再会の旋律

 すとん、瞬矢が着ているシャツの胸元に顔をうずめ咽(むせ)ぶ。


「ごめん……。こういうの苦手なの、分かってる。けど、しばらくこうさせて……」


 現状を理解していた瞬矢は突っぱねることもできず、シャツに顔をうずめる茜の小柄な背中をさする。


「ああ。今回だけ特別だ」


 そう小さく呟いて。


 自分と最も近しい者の死。それがどれほどのものなのか、瞬矢には想像し難くかける言葉も見当たらない。


 今この時、瞬矢は改めて実感した。血は繋がってないが、自分には両親がいる。


 そして、刹那が……。


 その有り難さ。尊さ。


 ただ思うこと。それは――この出来事が悪い夢であったなら、どんなによかったことか。


 現実にしては、あまりにも悲しすぎる再会だ。


 ――蝉時雨。窓から差すオレンジ色の夕日だけが、2人を温かく優しく染め上げた。


 いまだ耳について離れない夕方のたおやかな旋律に、瞬矢は俯き加減にそっと目を伏せる。ふわり、夏のかすかな香りがした。


 今は、このままで――。


 

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