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【S】―エス―01

第9章 刹那

 ◇1


 ――201X年 10月20日。


 午後4時10分。


 瞬矢は1人、茜の母親が入院している病院を訪れていた。


 先日、屋敷跡で拾った写真。そのことで、どうしても彼女の母親に訊いておきたかった為だ。


 病棟の詰め所を過ぎたところにある、相変わらずの4人部屋。


 向かって右奥の窓際のスペースに茜の母親、夕子はいた。


 瞬矢に気づいた彼女は、にこやかな笑みを向け会釈をする。つられて瞬矢も足を止め一礼を返す。


「あなたに訊きたいことが……」


 ポケットから例の写真を取り出し見せる。


「この写真に写っている少年、彼は――」


 言い終える前に彼女は血相を変え、瞬矢から写真をもぎ取り顔に近づけた。


 そして、よもや写真に穴が空くのではないかというほど凝視する。


「この写真、どこで?」


 震える声で訊ねる彼女に、瞬矢は一度床へ視線を送り考える素振り。そして再び彼女を見て答えた。


「10年前に火事があったあの屋敷です。でもなぜ、あなたが弟と一緒に?」
 

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