【S】―エス―01
第12章 穿つ森
不思議なことに苔むしたその下は、何かを隠すかの如くセメントで塗り固められていた。
不測の事態に、準備を整え改めて出直すことにした。
翌日の白昼、再度その場所を訪れた瞬矢の手には工具が握られており、シャツの両袖を捲り上げたそこからは「今日こそは」という意気込みが窺える。
あえて手間のかかる方法を選んだのは、やはり墓石に傷をつけない為だ。
持っていた彫刻刀と鎚を地面に置き、墓石の前で屈み込む瞬矢。
軽く手を合わせ、その後左手で『東雲』と彫られた墓碑に触れ口元にわずかな笑みを浮かべ語りかける。
「さて。お前が誰なのか、この目で確かめさせてもらうぞ」
地面に置いていた彫刻刀と鎚を手に取る。
悪戯っぽい微笑は消え、真剣な表情で墓石を見据え脆そうな部分に刃をあてがう。
その際、墓石自体を傷つけないよう注意を計らいながら、塗り込められたモルタルを削りまた穿つ。
モルタルの削れる音が一帯に小気味よく響き、周囲に粉砕された破片が散る。
……とはいえやはり他人の墓だ。どうにも墓荒しをしているようで、あまりいい気はしない。
額には、うっすらと汗が滲む。
不測の事態に、準備を整え改めて出直すことにした。
翌日の白昼、再度その場所を訪れた瞬矢の手には工具が握られており、シャツの両袖を捲り上げたそこからは「今日こそは」という意気込みが窺える。
あえて手間のかかる方法を選んだのは、やはり墓石に傷をつけない為だ。
持っていた彫刻刀と鎚を地面に置き、墓石の前で屈み込む瞬矢。
軽く手を合わせ、その後左手で『東雲』と彫られた墓碑に触れ口元にわずかな笑みを浮かべ語りかける。
「さて。お前が誰なのか、この目で確かめさせてもらうぞ」
地面に置いていた彫刻刀と鎚を手に取る。
悪戯っぽい微笑は消え、真剣な表情で墓石を見据え脆そうな部分に刃をあてがう。
その際、墓石自体を傷つけないよう注意を計らいながら、塗り込められたモルタルを削りまた穿つ。
モルタルの削れる音が一帯に小気味よく響き、周囲に粉砕された破片が散る。
……とはいえやはり他人の墓だ。どうにも墓荒しをしているようで、あまりいい気はしない。
額には、うっすらと汗が滲む。