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【S】―エス―01

第2章 予兆

 窓から差す光のせいか、覗き込む茶色に混じった深い青色の光彩が妖しさを醸し出し、茜は言葉に詰まる。


 彼女は俯きがちに視線を游がせ、やがてゆっくり顔を上げ答えた。


「私は……、自分の信じたいものを信じてるの。それに、あなたなら本当に父と会えそうな気がしたから」


 そう言う彼女の真っ直ぐな茶色い両目には、口調と同等の強さがあり、瞬矢は思うのだった。


(どうも、この目は苦手だ)


 ひとつ溜め息をつくと左手を軽く額にあて、ふいっと視線を逸らし言う。


「……分かった。ただ、確実に会えるとは限らないからな」


 その言葉に、今まで曇りがちだった茜の表情が一転してぱあっと明るく変わる。


「ありがとう! 私も協力させて」


 瞬矢は再びソファにふんぞり返ると、顔を背け「勝手にしろ」と軽くあしらう。


 かくして始められた父親捜し。だが、その片隅で見えない何かが動き始めていた。




 

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