
【S】―エス―01
第13章 ある日の邂逅
◇
無機質で殺風景な白い部屋を暖色と変える午後の黄昏に包まれながら、彼は1人回顧する。
それはもう、いつのことだったか……。彼にとっても思い出せないくらい昔の記憶。
ただ、その日が麗(うらら)かな秋日だったということだけは確か。
**
クリーム色の外壁をした屋敷の裏手から、1人の少年はひょこっとその姿を覗かせる。
枝葉の合間から差す温かな日光を受け、目にかかるほどの黒髪が艶々と煌めく。
たおやかな風がふわりと吹き、少年の髪の毛と同じ細い黒色のリボンが白いシャツの襟元で揺れる。
紅葉鮮やかな庭園をゆっくりと歩く彼の視界に、見知らぬ人物が映り込む。
茶色い髪はひとつに結わえられており、黄色いブラウスと鶯(うぐいす)色の長いスカートを履いた柔らかな物腰の大人の女性。
地面にしゃがみ込む彼女は優しい眼差しで、屋敷の表側にある色とりどりの【何か】を見つめている。
(……誰だろう?)
初めて見る顔であった為、少年は多少訝りながらしきりに首を捻り、速度を緩めた歩みはクリーム色の外壁の横でぴたりと止まる。
無機質で殺風景な白い部屋を暖色と変える午後の黄昏に包まれながら、彼は1人回顧する。
それはもう、いつのことだったか……。彼にとっても思い出せないくらい昔の記憶。
ただ、その日が麗(うらら)かな秋日だったということだけは確か。
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クリーム色の外壁をした屋敷の裏手から、1人の少年はひょこっとその姿を覗かせる。
枝葉の合間から差す温かな日光を受け、目にかかるほどの黒髪が艶々と煌めく。
たおやかな風がふわりと吹き、少年の髪の毛と同じ細い黒色のリボンが白いシャツの襟元で揺れる。
紅葉鮮やかな庭園をゆっくりと歩く彼の視界に、見知らぬ人物が映り込む。
茶色い髪はひとつに結わえられており、黄色いブラウスと鶯(うぐいす)色の長いスカートを履いた柔らかな物腰の大人の女性。
地面にしゃがみ込む彼女は優しい眼差しで、屋敷の表側にある色とりどりの【何か】を見つめている。
(……誰だろう?)
初めて見る顔であった為、少年は多少訝りながらしきりに首を捻り、速度を緩めた歩みはクリーム色の外壁の横でぴたりと止まる。
