【S】―エス―01
第3章 亡霊からの手紙
「お前、いつの間に……?」
瞬矢は何か酷く懐かしい夢を見ていたような、そんな気分で両の瞼を擦る。
「30分くらい前。それよりほら、手紙きてたよ」
呆れ返ったようにそう言うと、茜はごくありきたりな茶封筒に入った手紙で、長めの黒い前髪に隠れた瞬矢の額をぺしぺしと小突く。
「だぁーっ! 分かったからやめろ!」
その手紙を鬱陶しそうに払いのけ、のそりと起き上がる。部屋の掛け時計は、もうすぐ午後3時を示そうとしていた。
「……あれっ?」
何かに気づいた茜は、パソコン画面の前に回り込む。
「この人……」
写真の右端に写っている1人を指差す。
「この男のこと知ってるのか?」
「今朝ニュースで見た、殺人事件の……」
彼女の宣う殺人事件というのは、数日前に見たおかしな夢と奇妙な一致を持つ、あの事件のことだろうか。
瞬矢は体を捻り、すぐ後ろの机に放ってあった新聞をひったくると、一面をガラステーブルの上に広げる。
(被害者の左首筋には死後【S】というアルファベット文字が刻み込まれていた。被害者の名前は中川 昭夫――)