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【S】―エス―01

第15章 宝探し

 香緒里はその箱を地面に置き、そっと蓋を開けた。中には黒い手帳と何かが記録されているであろうメモリーカードが入っていた。


 メモリーカードと手帳だけを入れておくには少々大きめの箱。


 そこに納められた黒い手帳を取り、ぱらぱらと中身を捲る。そこに綴られてある文字は、懐かしい――間違いなく父親のものだった。


 泥まみれの両手に取ったその手帳を、胸の前でぎゅっと抱え込む。


「父さん……」


(最後まで、ちゃんとヒント残してくれてたんだね)


 午後の暖かな日差しが庭いっぱいに降り注ぐ。


 メモ帳に綴られた誰にも語れぬ父の本音に、薄ら滲む視界。瞼を閉じ、浮かぶのは最後に見た笑顔。


 12年余りの時を経て、桜の下に見つけた父の言葉。最後の【宝探し】――。



 

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