テキストサイズ

【S】―エス―01

第16章 雪の降る夜

 茜はその口元を覆い隠すように巻かれた深緑色のマフラーを両手で押さえ、笑みはそのままに俯き顔半分を埋める。


 それは、予期せず与えられた彼の不器用でぶっきらぼうな優しさを確かめるかのように。


 まだ温もり残るマフラーからは、下ろしたての洗剤の香りと共にわずかに煙草の匂いがした。



 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ