【S】―エス―01
第17章 困惑
◇1
――201X年 12月14日。
午後3時40分。
瞬矢のもとへ向かう茜は、寒さを凌ぐ赤いダッフルコートを着ていた。
裾からはグレーのスカート、襟ぐりからはダークブラウンをしたハイネックのシャツが覗く。
手の内に握られた温もりも消え去ったそれを見つめる。
この感情が単なる敬慕なのか恋なのか、本当に分からなくなったのは恐らくあの屋敷を訪れた頃。
答えを見つけ出せずさ迷う本心に1人、駱駝色のムートンブーツへ視線を落とす。
それでも足は無意識に瞬矢のもとへと進み、気づけば見慣れたドアを前に立っていた。
「はぁ……」
やおら深い溜め息をつき、渡す物だけ置いて帰ろうかと迷う。だが、せっかく来たのだから少しだけ彼の顔を見たくなった。
ノックをし、呼んでも応答がない為にドアノブを掴み少し捻ってみると鍵が開いている。
ゆっくりとドアを開け中の様子を窺うと、実に無防備な態勢でごろりソファに身を投げ出していた。
「瞬矢?」
しばらく待てど一向に気づく気配がない。どうも眠っているらしい。
開きっぱなしの窓から、夕時の乾いた風が吹き込む。同時に半分ほど下ろされたブラインドが、冷たい風に揺られてカラリと鳴った。
――201X年 12月14日。
午後3時40分。
瞬矢のもとへ向かう茜は、寒さを凌ぐ赤いダッフルコートを着ていた。
裾からはグレーのスカート、襟ぐりからはダークブラウンをしたハイネックのシャツが覗く。
手の内に握られた温もりも消え去ったそれを見つめる。
この感情が単なる敬慕なのか恋なのか、本当に分からなくなったのは恐らくあの屋敷を訪れた頃。
答えを見つけ出せずさ迷う本心に1人、駱駝色のムートンブーツへ視線を落とす。
それでも足は無意識に瞬矢のもとへと進み、気づけば見慣れたドアを前に立っていた。
「はぁ……」
やおら深い溜め息をつき、渡す物だけ置いて帰ろうかと迷う。だが、せっかく来たのだから少しだけ彼の顔を見たくなった。
ノックをし、呼んでも応答がない為にドアノブを掴み少し捻ってみると鍵が開いている。
ゆっくりとドアを開け中の様子を窺うと、実に無防備な態勢でごろりソファに身を投げ出していた。
「瞬矢?」
しばらく待てど一向に気づく気配がない。どうも眠っているらしい。
開きっぱなしの窓から、夕時の乾いた風が吹き込む。同時に半分ほど下ろされたブラインドが、冷たい風に揺られてカラリと鳴った。