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【S】―エス―01

第17章 困惑

 
(まったく、風邪ひくじゃない)


 窓際まで歩き静かに窓を閉めた。


 傍の机にあるボールペンで、メモ代わりの付箋紙に一言書き足す。そしてそれらをガラステーブルの上に置き、ふと仰向けで眠る瞬矢に視線を落とす。


 夕暮れのオレンジに照らされ心地よさげに眠るその姿は、さながら子供のようだった。


 いつもならボタンをひとつ外して着ている白いシャツ。それも今日はふたつ分はだけ、鎖骨の付け根から胸元がだらしなく露になっている。


 起こさないようその場をそっと去ろうとした。その時――。


(……え!?)


 右腕に急激な圧がかかり、視界がぐらりと傾く。


「……っ」


 一定のリズムで伝わる確かな脈拍と温もり。ゆっくりと目を開けると、視界には心地よく上下を繰り返す皺がよった白。


 茜は次第に状況を把握する。自分が、瞬矢の上に覆い被さるような状態でいたことに。


 ゼロ距離。そのことを理解すると同時に頬は紅潮し、体の芯が熱くなるのが分かった。


 慌てて体をどかそうと身を起こす。けれども想像以上に強い力で腕を掴まれ、行動を制限される。
 

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