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【S】―エス―01

第18章 影の命

 そう。ある時ひとつの個体に起こった突然変異によってその根本を覆す……いや、それ以上の結果を叩き出したのだ。


 変異した遺伝子は短命でも疾患がある訳でもなく、それどころかあの日彼が語った蝶の話のような共有や共鳴といった力を得るに至った。


 そこで東雲 暁たち研究者は、ある手段をとる。


 それが【特別な複製】の複製。


 その結果として生み出されたのが、瞬矢たち複製だった。


 個体の複製、そう考えれば死んだはずの人物が目の前にいることも全てにおいて合点がいく。


 だが、強すぎる力は時として脅威となる。行なわれた能力の強制的な抑制、その過程でどうしても必要だったのが――。


「これだよ。Schatten Lebe――通称【影の命】」


 スーツのポケットからあの水色の薬品が入った、栓つきの試験管を取り出し眼前に掲げる。


「やっぱり、あんたが……」


 以前、路地裏で【影の命】と呼ばれる水色の薬品を射った人物は、やはり東雲 暁だった。


「どうして居場所が分かった?」


 瞬矢の問いかけに、彼は薬品をもとの場所に仕舞いながら答える。
 

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