【S】―エス―01
第18章 影の命
「君のナンバーが刻まれた腕輪、まだ持っているんだろう? その中には居場所を特定できる発信装置が組み込まれてる」
コートの左ポケットを探り、指先にひやりと当たったそれを取り出す。
だが半年以上前、東雲 暁が初めて現れた時、瞬矢はまだこれを見つけてはいなかった。特殊機関でもない限り、正確な居場所の特定は難しい。
今までに直接的な接触がないことから、その線は薄いだろう。だとすれば可能性はひとつ。
「装置は、これだけじゃないんだろ?」
手の中の腕輪から東雲 暁へと目線を移し、浮上した推測を確かめるような口調で投げかける。
すると彼はご明答とばかりに組んでいた両手の右だけを下ろし、左手は顎にあてたまま言った。形のよい三日月の笑みを貼り付けながら。
「ご明察。もうひとつ君の体の中に埋め込まれてるよ。勿論、彼にもね」
すうっと前へ伸ばした3本の指で瞬矢を指し示す。
そして伸ばした左手を引くと、今度は「ほらこのとおり」と掌サイズの端末画面を見せる。
そこには、文字と共に現在位置を示す赤い点が一定間隔で点滅を繰り返していた。