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【S】―エス―01

第19章 真相、そして――

 ◇1


 ――同日、午後7時05分。


 薄暗がりの中、肌に伝わる冷たい感触に香緒里は目を覚ます。まず視界に飛び込んできたのは、灰色の無機質なコンクリート。


 地面に手をつき起き上がろうと思ったのだが――。


「……っ!」


 紐のような物で後ろ手に縛られていた為、バランスを崩し転倒。再びコンクリートに身を預けることとなる。


(ここは……?)


 顔を歪めながら自由の利かない上体を捩り、しきりに辺りを見回す。


 自分がいる場所の間取りは天井までがらんと広く、背後にはブルーシートに覆われた何かがあった。正面に見える間口の広い入り口、倉庫のような場所だ。


 くすんだ窓から差し込む月明かりだけが淡く周囲を照らす。


 脇腹へわずかに走る痛みが、香緒里に現在の状況に至るまでの記憶を甦(よみがえ)らせた。


(そうだ。あの時――)


     **


 ――21日、午後7時10分。


 マンションの一室へと戻った香緒里は、リビングで父親の遺した黒い手帳に今一度目を通す。


 あの日、思い出と手がかりを辿り桜の木の下で見つけた黒い手帳。


 ゆっくりとページを捲る。
 

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