【S】―エス―01
第19章 真相、そして――
◇2
10年前、屋敷であの火事があった後――。
防寒具のひとつも着ていない格好の刹那は、指先まで酷く凍えそうだった。
彼女がくれた右手に巻かれている白いハンカチも、今は寒風に揺らぐばかり。
細雪が舞い、街を幻想的に彩る。塀を伝う指先は赤くかじかみ、吐く息は弱々しくも大気を白く染める。
やがてとある施設の前で力尽き、前のめりに倒れ込む。彼の左手首には【S‐07】と刻まれた銀色の腕輪だけが冷たく鈍く輝いていた。
以後、彼はその施設で過ごすようになる。だがその優秀さ故、次第に周りからは気味悪がられ、刹那は自ら皆と距離を置くようになった。
改めて思い知らされたのだ。自分の【異質】さを。
自分は自然に織り成された奇跡の産物などではなく、見も知らぬ他者の為、計算され造り出された存在であると。
前々から分かってはいたことであったが、改めて突きつけられたその事実は、彼の心に暗く晴れない影を落とした。そんな時、『櫻井 陸』と出会う。
――12月も終盤に差し掛かった日の夜。
施設に1人の男が訪ねてきた。歳は40代……といったところだろうか、きっちりとした身なりでスーツを着ている。
10年前、屋敷であの火事があった後――。
防寒具のひとつも着ていない格好の刹那は、指先まで酷く凍えそうだった。
彼女がくれた右手に巻かれている白いハンカチも、今は寒風に揺らぐばかり。
細雪が舞い、街を幻想的に彩る。塀を伝う指先は赤くかじかみ、吐く息は弱々しくも大気を白く染める。
やがてとある施設の前で力尽き、前のめりに倒れ込む。彼の左手首には【S‐07】と刻まれた銀色の腕輪だけが冷たく鈍く輝いていた。
以後、彼はその施設で過ごすようになる。だがその優秀さ故、次第に周りからは気味悪がられ、刹那は自ら皆と距離を置くようになった。
改めて思い知らされたのだ。自分の【異質】さを。
自分は自然に織り成された奇跡の産物などではなく、見も知らぬ他者の為、計算され造り出された存在であると。
前々から分かってはいたことであったが、改めて突きつけられたその事実は、彼の心に暗く晴れない影を落とした。そんな時、『櫻井 陸』と出会う。
――12月も終盤に差し掛かった日の夜。
施設に1人の男が訪ねてきた。歳は40代……といったところだろうか、きっちりとした身なりでスーツを着ている。