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【S】―エス―01

第19章 真相、そして――

 刹那は拾った警察手帳を投げ捨て、すでに動かなくなった地面のそれから視線を逸らし、天を仰ぐ。そしてひとつ白い息を吐き言った。


「向かって来る奴は、みんな潰すだけだ」


 淡々と、だがはっきりとした口調で。


 ――そう。例外はない。


 見上げた暗い空からはあの日と同じ細雪がちらつく。闇夜に映えるその小さな白い結晶は、ひやり、少年の頬に触れ溶けた。



(そうさ。誰だろうと、片っ端から……)



     **



 午後7時38分。


 森を抜けた刹那はひとつの建物を見据える。雲間からは月明かりが差す。


 彼を覆い隠す物がなくなり浮き彫りとなったのは、空にある三日月のように形成された微笑。


 柔らかな月明かりに照らされたその双眸は、淡い紫色に光を帯び輝く。


 足元の湿気を孕んだ土をぐっと踏みしめ、脚力だけで宙へと飛躍する。風を切り口元に笑みを湛える彼が思うはただひとつ。




 ――向カッテ来ル奴ハ、ミンナ潰ス。



 

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