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【S】―エス―01

第3章 亡霊からの手紙

 茜は涙を指で拭い黙って聞いていた。


「あれは、どちらかというと『共鳴』――」


 見開かれた両目の奥で瞳孔がぎゅっと閉じる。


「あいつは、俺の知らない何かを知ってる。いったい何を……」


「もういい! もう行こう!」


 割って入るかのように、茜は半ば強引に瞬矢の腕を引きその場から離れようとした。その後ろ姿と勢いに瞬矢は、手を振りほどくことすら忘れてしまう。


 公園の並木道を抜けたところで、黒いパンツスーツを着た20代の女が行く手を遮る。


「斎藤 瞬矢ね?」


 きりりとした目つきの彼女は、黒いロングヘアをわずかに靡(なび)かせ、低音だがどこか深みのある声で言った。


 いきなり現れたその女に瞬矢も茜も立ち止まり半歩身を引く。


「……少し話いいかしら?」


 新田 香緒里(にった かおり)という女は、警察手帳をちらつかせ再び仕舞う。その際、伏せていた視線を瞬矢に向けた。



 

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