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【S】―エス―01

第20章 対峙

 地下から出て来るまでの間に、東雲 暁の話を聞きながら瞬矢は思う。


 茜はこのことを知っているのだろうか。ふと先ほど添付されてきた画像ファイルの茜の姿を思い出し、瞬矢の胸中に焦燥感が募る。


 頬を撫でる冷たい夜風が、更にそれを煽り立てた。


「あいつの位置情報は分かるか!?」


 瞬矢に訊ねられ、東雲 暁は端末の表示画面を切り替えた。瞬矢も引き返しそれを覗き込む。


 表示された点滅する赤い座標は、この屋敷跡のすぐ側を示していたのだ。


 座標を追い辿り着いたのは、もとは何かの施設だったろうコンクリートで出来た3階建てくらいの廃墟。


 入り口付近の木の枝にかかる、黒っぽく細長い布が月明かりのもとわずかだが視界に映り込む。


 懐中電灯の局所的な円形の明かりで照らす。夜風にはためくそれは、以前茜に貸してそのままとなっていた深緑色のマフラーだった。


 周囲に柵はなく、廃墟の入り口付近まで歩み行くと、木の枝にかかっているそれを掴み取る。


「ん?」


 違和感に思わず声を漏らす。
 

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