【S】―エス―01
第20章 対峙
明らかに彼女のものではない筆跡。そもそも茜は、このような大人びた字を書かない。
……誘っているのか。
立ち止まり、今一度思考を巡らす。
もしも自分が刹那だったら、全てを知った時何をするだろうと。
――答えは明白だった。
彼は、自分が何者であるかそしてなんの為に造り出されたのか、その存在を知る人間全て消しにかかるだろう。勿論ここにいる茜の父、東雲 暁も含めて。
「ここで待っててくれ! 茜は必ず――」
折角生きていた、再開できる人を危険に晒させる訳にはいかない。もう、誰かの……彼女の悲しむ姿を見るのはご免だった。
黙って肯定する彼の返答を背に受け、廃墟の入り口へ駆け出そうとしながらふと思う。