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【S】―エス―01

第20章 対峙

 だがもしその事実を茜が知ってしまったなら、彼女もその1人に含まれるのではないのか。そして刹那自身も……。


 しかし、どうやって。


 その答えの糸口となる台詞を突きつけたのは、他ならぬ東雲 暁だった。


「瞬矢君……だったね。君がもし彼と対峙することになっても、力は使わないでほしい」


 くるりと彼の方へ向き直り訊ねる。


「力って、使ったら何が起きるんだ?」


 それは少なからず自分も関係していることであり、そして使うなとは何故なのか知っておく必要があった。


 少し間を置き、目の前の彼は答える。


「斥力だよ」


「斥力?」


 あまりの突拍子もない発言に小首を傾げ訝る。


 そもそも『斥力』とは重力の対である。


 常に一定の負荷がかかっているこの地上において、必要以上の斥力が発生するなど物理的に起こりえないのだ。


 しかし――。


「君も覚えがあるはずだ」


 確かに覚えはあった。だが瞬矢自身、それを自らの意思で引き出し利用する術を心得てはいなかった。


 瞬矢は思う。本当に全て丸く収められるのかと。
 

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