
【S】―エス―01
第20章 対峙
筆跡は、先ほどのものと同じだった。
メモの意図は定かではない。だが恐らく『彼』とは自分もしくは刹那で、『目の前の自分』というのは、そこに向き合うもう1人の自分のことだろう。
(これは、刹那から見た俺? それとも俺から見た刹那を表したもの?)
見ようによっては、どちらの視点からでも捉えることができる。
……どちらでもいい。分かったところでこれらの行動に変わりはないのだから。
メモをぐしゃりと握り左手の内に納め、左右に分岐した長い廊下を見やる。
――さて、問題はどちらに進めばいいかだ。まずは左、そして右とゆっくり交互に照らし廊下の先を確認する。
左はひと部屋ずつあるだけで、すぐ突き当たりだった。右は数メートル置きに一定の間隔で端まで部屋が並んでいる。
部屋数は思ったほどない。しかも、場所も2階とはっきりしていた。
理由としてあのメモは十中八九、刹那が書いたものに相違ないからであり、彼が場所を偽る理由が思い当たらなかったからである。
まずは、数と場所が限られている左側の2部屋から確認することにした。
