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【S】―エス―01

第20章 対峙

 向かい合う2人のそれは鏡合わせでありながら決して【対称】ではなく、むしろ相反している。


 それぞれに個があるとはいえ、いつどこで、何が2人をこうまで違えたのか。


 それは恐らく当人たちしか知り得ないだろう。


 だが刹那は瞬矢の様子など気にも留めず、むしろその反応を楽しんでいるかのようだ。


 再び茜の下顎をくいと持ち上げ自分に向かせると、口元を親指で準える。


「ぁ……」


 漏れたのは、譫言(うわごと)にも似たかすかな息。


 そして嘲笑うかの如く瞬矢を一瞥し――自らの唇を重ね合わせた。


「!」


 その時、瞬矢の中にある何かがぷつりと音を立てて切れる。


「――刹那あぁぁ!」



 

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