【S】―エス―01
第20章 対峙
ひとつ、またひとつ外され、はだけたコートの下から黒いハイネックシャツが露となる。その上に指を滑らせた。
下ろされた左手の指先は、肌が剥き出しとなっている腿の線を内側へとなぞり上げる。
「ん……っ」
無意識にも感じた違和感からか、茜の口の端から甘やかな吐息がひとつ漏れる。
「――っ……やめろ!」
だが、周囲を鉄材に阻まれ身動きがとれない。もがけばもがくほど傷口から赤い血がどくり、どくりと脈打ち溢れ出る。
そしてそれは、体の至るところを貫いた鉄骨を滴り、温かく衣服を染めた。
指はシャツの裾へするりと滑り込み、遠慮がちに覗く色白の腹部。頬は体温の上昇に伴い、わずかな紅潮を見せる。
抜け出さなければ――。例えどれほど出血しようと、もがき肉裂けようとも。
その時、瞬矢にわずかな変化が起こる。
焼けつくような痛みに表情を歪めながらも、憤り震えるその双眸は水色に淡く光を帯び、細かなコンクリート片を浮遊させた。
「ぐぅ、つっ……!」
食い縛った犬歯を剥き出しに低く唸り、変色した青い瞳でねめつける。その光景は、さながら狡猾な蛇に対して牙を剥く獣のようであった。
下ろされた左手の指先は、肌が剥き出しとなっている腿の線を内側へとなぞり上げる。
「ん……っ」
無意識にも感じた違和感からか、茜の口の端から甘やかな吐息がひとつ漏れる。
「――っ……やめろ!」
だが、周囲を鉄材に阻まれ身動きがとれない。もがけばもがくほど傷口から赤い血がどくり、どくりと脈打ち溢れ出る。
そしてそれは、体の至るところを貫いた鉄骨を滴り、温かく衣服を染めた。
指はシャツの裾へするりと滑り込み、遠慮がちに覗く色白の腹部。頬は体温の上昇に伴い、わずかな紅潮を見せる。
抜け出さなければ――。例えどれほど出血しようと、もがき肉裂けようとも。
その時、瞬矢にわずかな変化が起こる。
焼けつくような痛みに表情を歪めながらも、憤り震えるその双眸は水色に淡く光を帯び、細かなコンクリート片を浮遊させた。
「ぐぅ、つっ……!」
食い縛った犬歯を剥き出しに低く唸り、変色した青い瞳でねめつける。その光景は、さながら狡猾な蛇に対して牙を剥く獣のようであった。