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【S】―エス―01

第21章 崩壊

 足元に転がった【S‐07】と自身の左手の中にある【S‐06】の数字。双方が視界に留まり、頭の中でぐるぐると渦巻く。


「あの日、交換したじゃないか」


 前方で刹那の声が聞こえるが、もう、まともに頭を働かせ考えることができなかった。


 それは、『斎藤 瞬矢』としての自己の崩壊。今、この時まで時間をかけて繋ぎ合わせた記憶は、ひっくり返したジグソーパズルのピースのように崩れ落ちた。


 斎藤 瞬矢である自分。


 東雲 刹那のクローンである自分。


 あの場所で目覚めてからの自分。


 眼前の彼が見せた【それ】により、全てが一瞬にして否定され、肯定された。10年前、左肩に受けた火傷の痕が疼く。


 ならば、自分はいったい何者なのか……。


(……『瞬矢』? 『刹那』? 『りく』? もし腕輪を交換したとして、なら本当の俺は、おれは……)


 倒錯する意識が、屋敷の地下で目覚めたあの頃をさ迷う。


「瞬……矢?」


 風に吹かれ、かすかに鈴の鳴るような声に、彼はゆっくりと顔を上げて茜の方を振り仰ぐ。




「僕は、誰……?」



 

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