【S】―エス―01
第22章 あの日――
◇
それは10年前、とある秋日のこと。1人の少年は自分たちの部屋をこそりと抜け出し、窓のない廊下を歩いていた。
(ここはどこだろう……?)
半開きとなっているドアの向こうから明るい光が差し込む。光の先を見ようと少年は金色のドアノブに手をかけ、その際わずかに音が鳴る。
「……だれ?」
窓の外の緑樹でたむろう小鳥の囀(さえず)りに混じり、高く、けれども決して耳につかない少女の声が聞こえてきた。
一瞬、どきりと小さな胸の鼓動が跳ね上がる。だがしかしこの先に広がる世界への探求心に負け、恐る恐るドアを開けた。
「――っ!」
あまりの眩しさに少年は思わずぎゅっと目を瞑る。差し込む日光にも慣れてきた頃、そろそろと瞼を開く。
まず視界に飛び込んできたのは、暖色系の絨毯が敷かれた広い部屋に窓際でふわりと靡く白いカーテンレース。そして――。
「あなた、だあれ?」
広い部屋の奥で床にしゃがみ込む、自分よりも幼い少女の姿だった。
再び問いかけてきた彼女のそれに、敵意や警戒心などといった類いのものは感じられず、むしろそれらとは対して非なる好奇心で溢れていた。
「僕は……――」
それは10年前、とある秋日のこと。1人の少年は自分たちの部屋をこそりと抜け出し、窓のない廊下を歩いていた。
(ここはどこだろう……?)
半開きとなっているドアの向こうから明るい光が差し込む。光の先を見ようと少年は金色のドアノブに手をかけ、その際わずかに音が鳴る。
「……だれ?」
窓の外の緑樹でたむろう小鳥の囀(さえず)りに混じり、高く、けれども決して耳につかない少女の声が聞こえてきた。
一瞬、どきりと小さな胸の鼓動が跳ね上がる。だがしかしこの先に広がる世界への探求心に負け、恐る恐るドアを開けた。
「――っ!」
あまりの眩しさに少年は思わずぎゅっと目を瞑る。差し込む日光にも慣れてきた頃、そろそろと瞼を開く。
まず視界に飛び込んできたのは、暖色系の絨毯が敷かれた広い部屋に窓際でふわりと靡く白いカーテンレース。そして――。
「あなた、だあれ?」
広い部屋の奥で床にしゃがみ込む、自分よりも幼い少女の姿だった。
再び問いかけてきた彼女のそれに、敵意や警戒心などといった類いのものは感じられず、むしろそれらとは対して非なる好奇心で溢れていた。
「僕は……――」