【S】―エス―01
第22章 あの日――
クローン、変異体、【S】計画――。
更にファイルを辿った先にあった名前は――『東雲 刹那』。そしてその写真。
それは自分と同じ容貌をした、黒髪の少年だった。
ずっと、ずっと不思議に思っていた。あの暗く冷たい場所で目覚め、そして何より彼と自分が瓜二つな訳。
耐え難い真実に打ちのめされ、がくがくと両膝が震える。持っていたA4サイズのファイルの束が、するりと両手から滑り落ちた。
自身がこの場に存在する理由を知った彼は、右手で左胸を押さえ、シャツに隠れたそれに爪を立てる。
「あぁ……あ、ぁああぁぁ――っ!」
嗚咽にも近い叫喚、魂からの叫び。それは部屋のドアを抜けて廊下の先まで届き、少年は膝から床へどさりと崩れ落ちる。
彼らの、限られた小さな世界の中の大きな自由は、その日を境にぷつりと絶たれた。