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【S】―エス―01

第23章 覚醒

 ◇1


 その日は12月22日。もう、かれこれ2週間以上も彼の姿を見ていない。


 薄暗い部屋の片隅、幼い茜は窓の外でちらつく雪を眺める。その表情はどこか寂しげだ。


「……りく」


 もう、彼とは会えないんじゃないか。けれどもあんな『約束』をしたのだから、きっと大丈夫――そんなことを考えている時だった。


「……!」


 別の窓から音がして、はっと右側を振り返るとそこにはずっと会いたかった人物『りく』がいた。


 外は夜の帳(とばり)も降り、雪がちらついているにも関わらず、コートの一枚すら着ていない。


 薄着な彼は窓枠に手をつき足をかけ、苦々しい面持ちで部屋の中を覗き込む。


「りく!」


 よく見れば、彼の右手からは赤い血が滴り落ち、白いシャツの袖口を染めていた。


 彼を招き入れ、半開きとなった窓から吹き込む風にカーテンが揺れる。


 以前のように向かい合い、絨毯の敷かれた床へ座り込む2人。


「ふふっ……」


「はは……っ」


 笑顔を見せるお互いの口から白い息が漏れ、それは戯れるように2人の中ほどで絡み合いひとつに混ざる。
 

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