【S】―エス―01
第23章 覚醒
「えっ?」
床にへたり込んだまま、きょとんと瞬矢を見上げる。返ってきたのは間の抜けた返答。
つい2週間以上前のことだったが、もう何ヵ月も前……随分昔のことのように思えた。
刹那の生存を、事件への関与を知った時から瞬矢にはひとつの確固とした目的があり、それだけは何があろうと決して揺らぐことも忘れることもなかった。
あの日の言葉と自身の思いを照らし合わせるかの如く目を伏せ、やがてゆっくりと瞼を持ち上げ開口する。
「お前の言ったとおりだ」
眉を聳やかせ、瞬矢は目の前にいる刹那を見据えた。彼は相変わらず薄紫色の両目を細め、くすくすと笑みを浮かべている。
彼の背後には、直径2、3メートルほどの歪んだ真っ暗な空間。その空間の中、放出されぶつかり合ったエネルギーを中心に細かい光の粒が終結する。
それは、新たな次元を形成しようとしていた。瞬矢はそこにひとつの確信を得、言葉を紡ぐ。
「俺の『目的』は――」
淡い光を放つ水色の双眸は、1人の個を持った人間として確固たる意志のもと眼前の人物を鋭く見つめていた。
「――俺は、刹那(あいつ)を助けたい」