【S】―エス―01
第23章 覚醒
「りく――」そう言いかけて茜は下唇を噛み大きくかぶりを横に振り、俯き開口する。
「瞬矢……私が、2人を見分けられなかったから。よく見れば全然違うのに……。だから――」
咽びながら言葉を紡ぐ。
そう。『りく』は彼らの共有名。
先だってその名前で呼ばれたのは瞬矢であるが、刹那もまた彼女から同じ名前で呼ばれていたのだ。
そして彼女は、腕輪に刻まれた【S‐06】という数字を『りく』という少年を判別する為の目印にしていただけ。
全てを聞き終えぬ内に瞬矢は瞑目し、口角だけを少しばかり吊りあげ言葉の続きを遮るように言う。
「分かったからもう泣くな」
「お前は悪くない」そう続け、ゆっくりと目を開ける。そして、つい先ほど靄に染まり白濁する意識の中で聞いた茜の言葉を思い出す。
(そうだ、どっちがどっちの数字かなんて関係ない。俺は俺なんだ)
「……茜、以前俺に言ったよな? 『もし自分が分からなくなっても、目的だけは見失うな』って」
「瞬矢……私が、2人を見分けられなかったから。よく見れば全然違うのに……。だから――」
咽びながら言葉を紡ぐ。
そう。『りく』は彼らの共有名。
先だってその名前で呼ばれたのは瞬矢であるが、刹那もまた彼女から同じ名前で呼ばれていたのだ。
そして彼女は、腕輪に刻まれた【S‐06】という数字を『りく』という少年を判別する為の目印にしていただけ。
全てを聞き終えぬ内に瞬矢は瞑目し、口角だけを少しばかり吊りあげ言葉の続きを遮るように言う。
「分かったからもう泣くな」
「お前は悪くない」そう続け、ゆっくりと目を開ける。そして、つい先ほど靄に染まり白濁する意識の中で聞いた茜の言葉を思い出す。
(そうだ、どっちがどっちの数字かなんて関係ない。俺は俺なんだ)
「……茜、以前俺に言ったよな? 『もし自分が分からなくなっても、目的だけは見失うな』って」