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【S】―エス―01

第24章 兄弟

 確信を得たかのような瞬矢の言葉に対して彼は、


「だったらどうなの?」


 口の端に笑みを湛えたまま否定はせず、だが聞きようによっては肯定ともとれる答えを返す。


「言っただろ? お前を止めてみせる」


 瞬矢のその台詞を聞いて、彼はふっと嘲るかの如く口角をつり上げた。


「もう遅いよ。ほら、僕を止めても崩壊を始めたこの世界は止まらない」


 後方をちら、と見返り刹那は言う。彼とその背後に次元を形成しつつある空間を見やり、瞬矢は口元に軽く笑みを滲ませ答える。


「……かもな。けど、何もしないよりましだ」


 少なくとも後悔の念は残らない。


 今、眼前にいる彼の闇を一番理解してやれるのは自分しかいない、ならばせめて兄として……とそう思ったのだ。


 瞬矢は踏み出した足に更なる力を加え、淡く光を帯びた水色の双眸で刹那を見据えたまま訊ねる。


「ひとつ訊きたい。何がお前をそうさせたんだ?」


 確認しておきたかったこと。それは、彼をこのような行為へと至らしめた真の動機である。


「『何が』? そうだね……」
 

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