【S】―エス―01
第24章 兄弟
◇2
――建物が崩落する、その約15分ほど前。
瞬矢と刹那の2人は、互いに柔らかな光の粒を直径1メートルの範囲で纏わせ対峙する。
コンクリートの床に落ちていた銀色の腕輪は風圧に引き寄せられ空中分解し、無数の粒子が煌めく空間の闇へと吸収されてゆく。
周囲の壁には亀裂が走り、今にも崩れ落ちそうだ。
「『力』、やっと使う気になったんだ」
刹那は今更とばかりに薄紫色の目を細め、くすりと笑う。けれどもその表情は、まるで今こうして瞬矢と対峙することを待ちわびていたかのようだ。
「ああ。こうでもしないと、お前を止められそうにないからな」
真っ直ぐに刹那を見据え答える。水色の瞳と螺旋状に体を覆う靄のようなものの威圧感に反し、その口調は至って冷静だ。
思えば自分のところにあの手紙が届いた時から、すでに兆しはあったのかもしれない。
当初、瞬矢も4人目は茜の父親だと思っていた。だが彼は、瞬矢たちを造り出した時と同じ手法を用いて自身の死を偽装しただけであった。
「本当の4人目、最後の1人は――」
右足を前に踏み出す。
「刹那、お前自身だったんじゃないのか?」
――建物が崩落する、その約15分ほど前。
瞬矢と刹那の2人は、互いに柔らかな光の粒を直径1メートルの範囲で纏わせ対峙する。
コンクリートの床に落ちていた銀色の腕輪は風圧に引き寄せられ空中分解し、無数の粒子が煌めく空間の闇へと吸収されてゆく。
周囲の壁には亀裂が走り、今にも崩れ落ちそうだ。
「『力』、やっと使う気になったんだ」
刹那は今更とばかりに薄紫色の目を細め、くすりと笑う。けれどもその表情は、まるで今こうして瞬矢と対峙することを待ちわびていたかのようだ。
「ああ。こうでもしないと、お前を止められそうにないからな」
真っ直ぐに刹那を見据え答える。水色の瞳と螺旋状に体を覆う靄のようなものの威圧感に反し、その口調は至って冷静だ。
思えば自分のところにあの手紙が届いた時から、すでに兆しはあったのかもしれない。
当初、瞬矢も4人目は茜の父親だと思っていた。だが彼は、瞬矢たちを造り出した時と同じ手法を用いて自身の死を偽装しただけであった。
「本当の4人目、最後の1人は――」
右足を前に踏み出す。
「刹那、お前自身だったんじゃないのか?」