【S】―エス―01
第2章 予兆
◇
――およそ10年前。
「火事だ! 逃げろ!」
慌ただしく誰かの退避を促す声。
ある日、突然起こった火事。そこがどこなのかも知れない、ただ辺りは一面火の海と化していた。
「――早くっ、こっちへ!」
全身煤(すす)にまみれた黒髪の少年は、どうすることも出来ず炎の中でただただ佇む彼を助けようと、必死に声を張り上げ手を伸ばす。
ほんの一瞬、指先が彼の手に触れた。
その時、炎の影響でわずかに色づいた、彼の形のよい唇が言葉を紡ぐ。
そして髪型も服装も全く同じ容貌の彼は、両の瞳にオレンジ色の炎と少年を映しながら、寂しげににこりと笑った。
途端、天井が崩れ、立ち上る煙と炎が2人の少年を呑み込んだ。
**
――およそ10年前。
「火事だ! 逃げろ!」
慌ただしく誰かの退避を促す声。
ある日、突然起こった火事。そこがどこなのかも知れない、ただ辺りは一面火の海と化していた。
「――早くっ、こっちへ!」
全身煤(すす)にまみれた黒髪の少年は、どうすることも出来ず炎の中でただただ佇む彼を助けようと、必死に声を張り上げ手を伸ばす。
ほんの一瞬、指先が彼の手に触れた。
その時、炎の影響でわずかに色づいた、彼の形のよい唇が言葉を紡ぐ。
そして髪型も服装も全く同じ容貌の彼は、両の瞳にオレンジ色の炎と少年を映しながら、寂しげににこりと笑った。
途端、天井が崩れ、立ち上る煙と炎が2人の少年を呑み込んだ。
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