
【S】―エス―01
第26章 第二部‐古城の少年‐
これ以上の不安を与えまいと出来るだけ冷静に、かつ端的に刹那はコートの裾を掴む少年へと告げる。
元々彼に言語が通じるはずもなく。だが、表情や仕草から意図が通じたのか少年はこくりと頷き、刹那の背後へ隠れるように身を寄せた。
薄紫色の双眸を温かな光に揺らめかせふっと微笑み、再び前を見据える。少年の褐色の瞳もまた、迷彩服を身に纏い武装した追っ手と白衣の男を見つめる。
白衣の男は薄紫の瞳に感嘆と好奇の意を示した。
「聞いた話では、日本の【S】は死んだはずだったが……。まさか、こんなところでお目にかかれるとは」
くすんだ金髪に碧眼の彼は、なんとも流暢な日本語を話す。
「『それ』は我々の成果。こちらへ渡してもらおうか? もし拒否すれば、君にも消えて貰うしかない」
自分の背後でコートの裾にすがる少年を『それ』と呼び、まるで物を扱うかの如き男の台詞。その全てを、刹那は気に入らないとばかりに眉をひそめる。
「この子は渡せない。それに、消えるのは――君たちだ」
元々彼に言語が通じるはずもなく。だが、表情や仕草から意図が通じたのか少年はこくりと頷き、刹那の背後へ隠れるように身を寄せた。
薄紫色の双眸を温かな光に揺らめかせふっと微笑み、再び前を見据える。少年の褐色の瞳もまた、迷彩服を身に纏い武装した追っ手と白衣の男を見つめる。
白衣の男は薄紫の瞳に感嘆と好奇の意を示した。
「聞いた話では、日本の【S】は死んだはずだったが……。まさか、こんなところでお目にかかれるとは」
くすんだ金髪に碧眼の彼は、なんとも流暢な日本語を話す。
「『それ』は我々の成果。こちらへ渡してもらおうか? もし拒否すれば、君にも消えて貰うしかない」
自分の背後でコートの裾にすがる少年を『それ』と呼び、まるで物を扱うかの如き男の台詞。その全てを、刹那は気に入らないとばかりに眉をひそめる。
「この子は渡せない。それに、消えるのは――君たちだ」
