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【S】―エス―01

第4章 あかねいろ

 そこには、アイスが所狭しと積まれており、他には何も入っていなかったからだ。


「見たな?」


 瞬矢の一声で茜は我に返ったかのように、はっと肩をすくめ振り返る。


「この偏食家!」


 瞬矢は部屋と部屋を仕切る壁の縁に凭れたまま、ふん、と鼻を鳴らす。


「誉めてもやらんぞ!」


 腕を組み、優越感たっぷりな表情で見下ろす瞬矢。


「まぁ、お前の場合もう少し乳製品摂らないと、育たない……」


 その言葉に、しゃがみ込んでいた茜の両肩がぴくりと跳ね上がる。


「余計なお世話!」


 彼の口から放たれた思わぬ侮辱的な発言。それに対し、茜は陳列されているアイスをひとつ掴み、瞬矢に向けて投げつけた。


「おっと!」


 瞬矢は一直線に飛んで来たそれを、右手を上げて顔の横でキャッチする。


 それを目にした茜はぐっと顎を引き、上目遣いで恨みがましく睨みつけた。


 だがすぐさま視線を逸らし、そして呆れたとでも言わんばかりに「まったく……」と深い溜め息をつく。


「――で、どうするの?」
 

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