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【S】―エス―01

第4章 あかねいろ

 瞬矢の目の前を通り過ぎると、どさりとソファに腰を下ろし、先日のメモを見やり訊ねる。


「まあ、そのうち……」


 瞬矢の曖昧な答えに茜は右手で頬杖をつき、覗き込むような形で言った。


「ほんとは恐いんでしょ?」


 真っ直ぐ見据える彼女の茶色い瞳は、心の内までをも見透かしているようであった。


「……」


 痛いところを突かれ、仏頂面でそっぽを向く。それを見た茜はくすくすと悪戯っぽい笑みを浮かべ、更に一言。


「ついてってあげようか?」


「はいはい……」


 冗談と言わんばかりに鼻であしらう。


「ま、兎も角……だ。まずはこっちを片づけちまわないとな」


 彼女の父親こと、東雲 暁の関係者。瞬矢は彼の最も近くにいた数名に、片っ端から聞き込みをすることにした。


「こっちは、明日にでもあたってみようと思う」


 そう言い、瞬矢はガラステーブルの上で手に取った東雲 暁に関する資料を纏める。


「ついて来てほしいところがあるの」


 茜は、何かを企んでいるかのような笑顔を見せる。こうして彼女が切り出す時には、決まって何か起こるのだ。


 ただただ嫌な予感しかしなかった。


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