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【S】―エス―01

第28章 愛憎の刃

 ◇1


 遊歩道脇のベンチに腰を下ろした彼女は、どこから話せばいいものかと困り顔で手元を見つめる。


「今から5年以上も前の事よ。ワタシの父が殺されたのは」


 彼女は地面に視線を落とし、ふっと溜め息をつく。


「15歳だったし、理由なんて分かる筈なかったわ。ただ失意に暮れる中、彼が現れた」


 曖昧な笑みを湛え彼女は再度天を仰ぐ。


「もともと、ワタシに名前なんてなかった。『レディ・メイ』は父がつけた呼び名」


 「ワタシのことをそう呼ぶのは父だけだった」そう言って胸元で金色に輝くL・Mのペンダントに触れる。


「彼の所へ来てから、ワタシは『リン・メイ』として生まれ変わったの」
 

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