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【S】―エス―01

第28章 愛憎の刃

 『レディ・メイ』である意味をなくし、新たに『リン・メイ』と名付けられた。


 確かに、どちらも彼女なのかもしれない。だが目の前の彼女が見せる表情は、ふたつの名の間を行き来しているようにも思えた。


「しばらく経ってから『父親を殺した人物』そう言って彼に見せられたわ。刹那――アナタの写真をね」


 鋭い瞳の奥に、わずかだが躊躇(ためら)いの色を覗かせる。


 彼女の話から分かった事。


 初めて自分に名前をくれた大切な者を失い、失意の中また拾われ、終わりなき憎しみと孤独に生きた名もなき少女。


 それが今現在の『リン・メイ』の原点であると。
 

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