
【S】―エス―01
第29章 S‐145
その通路は森の中……しかも渓谷沿いの地下にある為か、天井から滴り落ちた水滴が至るところに大小様々な水溜まりを形成していた。
通路の中は外にいる時よりも、少年の気配がより著(いちじる)しく感じられた。
(……どこにいる?)
一旦立ち止まると少年の痕跡を探る為、俯き瞼を閉ざす。
じわり、直接肌を伝い、今までに幾度となく味わったあの感覚が襲う。それは思念であり残像であり、幻影の蝶と言霊。
瞼で視界を塞いでいても分かるほどに鮮明な、暗闇の中に少年の残像がよぎる。
一瞬歩みを止めた少年は振り返り褐色の瞳をこちらに向け、その度に頭の片隅で、チャラ……と鎖のような冷たい金属の擦れる音が反響した。
彼の耳にも覚えのある、【数字】という名の束縛の音だ。
それを知ってか知らずか、暗い瞼の裏に映る少年は再び踵を返し、今度は一瞥もくれず暗い通路の奥へすうっと溶け込む。
瞼を持ち上げるとすでに少年は消え失せおらず、目の前には薄暗い通路が続くばかり。だが刹那には、どちらへ向かえばいいのか手に取るように分かった。
少年が消えた薄暗い通路の先へ向かい、止まっていた歩を進める。
通路の中は外にいる時よりも、少年の気配がより著(いちじる)しく感じられた。
(……どこにいる?)
一旦立ち止まると少年の痕跡を探る為、俯き瞼を閉ざす。
じわり、直接肌を伝い、今までに幾度となく味わったあの感覚が襲う。それは思念であり残像であり、幻影の蝶と言霊。
瞼で視界を塞いでいても分かるほどに鮮明な、暗闇の中に少年の残像がよぎる。
一瞬歩みを止めた少年は振り返り褐色の瞳をこちらに向け、その度に頭の片隅で、チャラ……と鎖のような冷たい金属の擦れる音が反響した。
彼の耳にも覚えのある、【数字】という名の束縛の音だ。
それを知ってか知らずか、暗い瞼の裏に映る少年は再び踵を返し、今度は一瞥もくれず暗い通路の奥へすうっと溶け込む。
瞼を持ち上げるとすでに少年は消え失せおらず、目の前には薄暗い通路が続くばかり。だが刹那には、どちらへ向かえばいいのか手に取るように分かった。
少年が消えた薄暗い通路の先へ向かい、止まっていた歩を進める。
