【Ｓ】―エス―01
第29章 Ｓ‐145
すでに刹那の中で、この少年を殺すことよりも救いたいという気持ちの方が勝っていた。
《君は、自由になりたくはないのかい？》
「えっ……!?」
少年は小さく驚嘆の声を漏らし刹那を振り返り、これ以上ないほどに目を見張る。少年の、褐色の瞳の奥に宿った光がわずかに揺らいだ。
初めて耳にする少年の肉声は、日の出前の早朝の大気のように透明感あるものだった。
だがそれも一瞬のことで、すぐさま俯き表情を曇らせる。
《でも、ハロルドが……》
「『ハロルド』？」
初めて聞く名前に、刹那の脳裏にある人物が思い浮かぶ。『ハロルド』――残像の中で常に少年の傍らにいた、スーツを着た金髪の男のことだろうか。
兎も角、このままここにいてはいけない気がした。この少年を、将来に悲観しここの城壁から身投げしたローゼのようにしてはいけないと。
大事なのはこれからこの少年がどうしたいかである。
《君はどうしたいの？》
無感動な少年の姿が過去の自分を彷彿とさせ、刹那は無意識に訊ねていた。
《僕は……》
《君は、自由になりたくはないのかい？》
「えっ……!?」
少年は小さく驚嘆の声を漏らし刹那を振り返り、これ以上ないほどに目を見張る。少年の、褐色の瞳の奥に宿った光がわずかに揺らいだ。
初めて耳にする少年の肉声は、日の出前の早朝の大気のように透明感あるものだった。
だがそれも一瞬のことで、すぐさま俯き表情を曇らせる。
《でも、ハロルドが……》
「『ハロルド』？」
初めて聞く名前に、刹那の脳裏にある人物が思い浮かぶ。『ハロルド』――残像の中で常に少年の傍らにいた、スーツを着た金髪の男のことだろうか。
兎も角、このままここにいてはいけない気がした。この少年を、将来に悲観しここの城壁から身投げしたローゼのようにしてはいけないと。
大事なのはこれからこの少年がどうしたいかである。
《君はどうしたいの？》
無感動な少年の姿が過去の自分を彷彿とさせ、刹那は無意識に訊ねていた。
《僕は……》
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