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【S】―エス―01

第32章 原点

 
 咲羅が薬品を飲み下したその瞬間――、


「――っ!」


 褐色の瞳は緑色に変化し刮目。どくん、と脈打つ。


 わずかに薬品の残る試験管が手から滑り落ち、床へ着地して粉々に砕ける。


 全身に巡る血液が煮え、逆流するような感覚に襲われ、咲羅は足元からどさりと崩れ地に伏した。


「う……あぁあ……っ」


 蹲(うずくま)り、喉を震わせ発する言葉にならない声。


 淡く緑色に変化した瞳は見開かれ、しかし瞳孔は閉じきり、手足はびくびくと痙攣(けいれん)を繰り返す。


「大丈夫。次にアナタが目覚めるまで、誰もここへは近づかせないわ。誰も……」


 片膝をつきしゃがんだリンは、刮目したままシャツの襟元を掴み小刻みに体を震わせる咲羅を抱え上げ、そう静かに言う。


 そしてその姿は、暗い部屋の奥へと消えていった。



 

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