
【S】―エス―01
第34章 夢の断片
◇1
日本――翌、8月4日の早朝。
昨日ここへ入る為に使った研究施設の裏口へ立つ。夕べは暗く視界が不透明で気づかなかったが、裏口付近は倉庫のようになっている。
咲羅を救う為共について行くことを話すと、案の定、茜の父――東雲 暁は彼女の渡航を反対した。
だがそこで引かないのが彼女こと、東雲 茜である。
「言いたいことは分かるよ。瞬矢たちの能力を思えば……。でも、私はそれでよかったって思ってる」
茜の茶色い瞳の奥は、強い光に満ちていた。
「だって、お父さんが瞬矢たちを造り出さなかったら瞬矢とも会うことできなかったから」
「――!」
(茜……)
瞬矢は驚きの表情で茜を見やる。
(言ってくれるな……)
今まで自分たちが辿ってきた経緯を考え、確かにこれも何かの巡り合わせなのかもしれないと、俯き加減に思わず口の端を緩める。
確固とした意思で背を向ける茜もまた、大人でもないが彼女の父親が思う以上に思考を持つ、最早、幼い子供ではないのだ。
その事実に気づかされた東雲 暁は、どうか何事もなくという思いを込め、裏口から去りゆく茜の後ろ姿を見送る。
日本――翌、8月4日の早朝。
昨日ここへ入る為に使った研究施設の裏口へ立つ。夕べは暗く視界が不透明で気づかなかったが、裏口付近は倉庫のようになっている。
咲羅を救う為共について行くことを話すと、案の定、茜の父――東雲 暁は彼女の渡航を反対した。
だがそこで引かないのが彼女こと、東雲 茜である。
「言いたいことは分かるよ。瞬矢たちの能力を思えば……。でも、私はそれでよかったって思ってる」
茜の茶色い瞳の奥は、強い光に満ちていた。
「だって、お父さんが瞬矢たちを造り出さなかったら瞬矢とも会うことできなかったから」
「――!」
(茜……)
瞬矢は驚きの表情で茜を見やる。
(言ってくれるな……)
今まで自分たちが辿ってきた経緯を考え、確かにこれも何かの巡り合わせなのかもしれないと、俯き加減に思わず口の端を緩める。
確固とした意思で背を向ける茜もまた、大人でもないが彼女の父親が思う以上に思考を持つ、最早、幼い子供ではないのだ。
その事実に気づかされた東雲 暁は、どうか何事もなくという思いを込め、裏口から去りゆく茜の後ろ姿を見送る。
