
【S】―エス―01
第34章 夢の断片
――約1週間後。
8月10日、午前8時20分。
瞬矢と茜、2人のパスポートが発行され、再びドイツへ向かう為に成田空港へ。
刹那は元々向こうにいたので、さしたる感動もない。しかし瞬矢たちにとっては、これが初めての渡航である。
離陸までにはまだ少々時間があり、瞬矢は手持ちぶさたに代わり映えのしない外の景色を眺めていた。すると――、
「へぇ、世界遺産の教会とかあるんだぁ」
隣に座っている茜が現地のマップを開き、そこに視線を落としながら何やら楽しげだ。
感嘆の声を上げるその先には、ドイツ各州のとある教会を撮した写真が。
「おい、観光と違うんだからな。目的は……」
隣からマップを覗き込みながらも、瞬矢は念の為、目的を忘れないよう横から釘をさす。
言いかけた言葉に対して茜は頬を膨らませ、被せるように「分かってるよ」と膝の上に開いていたマップを閉じる。
午前8時25分。轟々とエンジン音を上げる飛行機は滑走路を走りだし、日本の地を離れた。
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